症例報告 ―乳がん
提携医療機関クリニックでの症例報告 ―乳がん
再発と転移を10年間繰り返した後、免疫療法も加えることで皮膚浸潤を伴った転移病巣が縮小した例
- 患者さま:
- 54歳 女性
- 診断名:
- 左乳がん
- 免疫療法:
- 樹状細胞ワクチン療法、活性化Tリンパ球療法
- 標準治療との併用:
- 抗がん剤、ホルモン剤、抗Her2抗体薬(ハーセプチン)
- 免疫療法開始時期:
- 2012年7月
- 症例報告時期:
- 2012年12月現在
- 担当医師:
- 神戸ハーバーランド免疫療法クリニック 横川 潔
治療内容と経過
<治療までの経緯|乳がんを診断されてから標準治療を行うも10年間再発と転移を繰り返す>
2000年10月 | 乳がんと診断される。 |
2002年10月 | 左乳房全摘出したところ、ステージⅢaの診断をされ、術後再発予防を目的に、6コースのアドリアシンとエンドキサンの抗がん剤治療を受けられていました。 |
2004年12月 | 胸の手術局部と左鎖骨下リンパ節に再発転移巣が確認される。 |
2005年1月 | ハーセプチンとタキソールの併用が奏功しています。 |
2009年2月 | 局部に再発が認められた為、これをまずは外科的に切除。 |
2009年4月~5月 | 放射線治療を施行。 |
2009年6月以降 | ホルモン治療とハーセプチン投与で大過なく経過。 |
2011年 | 局部に皮膚浸潤を伴った再発が認められる。 |
2011年8月~2012年4月 | タキソールを投与、しかし徐々に皮膚病巣が進行して来る。 |
2012年6月 | 神戸ハーバーランド免疫療法クリニックを受診。 |
2012年7月中旬 | 樹状細胞ワクチン療法を施行し、2週間ごとに浸潤部分に局所投与。 |
2012年9月下旬 | 活性化Tリンパ球療法を開始。 |
2012年10月上旬 | 皮膚病巣が乾燥化を伴って縮小し始めたことに気づく。 |
2012年10月中旬 | ホルモン製剤を抗癌剤(ナベルビン)へ変更。 |
2012年11月下旬 | PET-CT検査で、同年4月の所見と比較して胸骨周囲の転移病巣の縮小が確認されています。 |
患者さまより
胸部の皮膚病巣からの浸出液の為、それまで湯船に浸かることができずシャワーで済まされていましたが、病巣が乾燥してきたことで入浴ができることになったことを、患者さまがとても喜んでおられました。近々、家族での温泉旅行をご予定されているとのことです。
担当医師から
前々から、免疫療法に馴染んでいる医師の間で一般的に云われていることながら、樹状細胞-Tリンパ球が主役となる獲得免疫システムは相応のタイムラグをもって発揮されるものであり、因みに、本症例については当クリニックでの免疫療法開始後3ヶ月辺りからその効果が観られ始めています。今回の皮膚病巣への治療効果は、特に生活の質の向上という意味でも、ご本人へ少なからぬメリットを与えたようです。また、2005年から足掛けにして7年間に渉って投与されているハーセプチンは、がん細胞へ栄養を供給する経路を免疫学的に遮断しようとする”抗体”であり、これは当クリニックで投与可能なNK細胞と併せてがん細胞を殺傷することが既に明らかにされており、よって本患者さまに対しても、次の治療としてNK細胞療法を既に視野へ入れています。