口腔がん
口腔がんとは?
口腔がんは、口の中にできるがん全般をいいます。
日本では年間7,000人が発症し、がん全体の中では少ないといえます。しかし、30年前に比べると患者数は3倍にものぼり、今後も増加傾向にあるといえるでしょう。
比較的発見しやすい部位にできますが、その症状は虫歯や口内炎と似ているため、発見されながらも見逃され易いがんと言えるでしょう。
口腔がんの治療は、手術が最優先されます。手術は術後のQOLを始めとして体への負担の大きい治療となりますが、比較的に高い治癒率が期待できます。
術後の5年生存率は、舌がんの平均が60%、舌がん以外では60~70%で、上歯肉がんでは50%前後です。術後は抗がん剤、放射線治療を行いますが、当然ながらステージが高くなる程、再発の可能性を十分に覚悟しておく必要があります。
種類
発症する部位により「舌(ぜつ)がん」「歯肉がん」「頬粘膜(きょうねんまく)がん」「口唇(こうしん)がん」、舌と歯茎の間にできる「口腔底(こうくうてい)がん」、上顎(あご)にできる「硬口蓋(こうこうがい)がん」があります。
最も多いのは舌がんで、その後に口腔底がん、歯肉がんと続きます。
症状
口腔がんが発症する前段階の症状に、舌や歯肉、頬の粘膜が赤くなる紅板症や、白くなる白板症(はくばんしょう)があります。
初期症状には口唇または口腔内のただれやしこり、痛みやしびれ、出血などがあります。比較的、わかりやすい症状とは言えませんが、むし歯や口内炎、歯周病と似ているため、区別が難しいと言えます。口内炎は2週間程度で治まりますので、長期にわたる場合は注意が必要です。
また歯肉からの出血では歯周病と間違われるケースもあります。そのほか、噛みづらさや頬や舌の動きが鈍くなる、舌のしびれや麻痺、首のリンパ節の腫れなどが3週間以上続く場合も、口腔がんの疑いがあります。
原因
タバコ、アルコール、口腔内の不衛生、虫歯や入れ歯、食事による慢性的な刺激、また栄養不良やウィルスが考えられます。
生存率
例えば、舌がんの5年生存率は平均すると61%です。各ステージでは、ステージⅠが76~100%、ステージⅡで67~76%、ステージⅢは48~56%、ステージⅣでは22~32%です。一方、舌がん以外では平均すると60~70%で、上歯肉がんは50%前後となります。
再発転移
口腔がんが転移しやすい部位は、首やその他のリンパ節、肺、骨などが挙げられます。
治療
従来から、外科手術が最優先されてきました。しかしながら、他の部位と異なり、切除後に傷口を縫合することができない場合が多く、傷口保護のため植皮や皮膚粘膜修復材料を用いる必要が少なからずあります。また、腫瘍と一緒に骨も切除するために骨再建手術を加えることもあり、かなり手間の掛かる手術となります。
近年は、QOLを更に問題視する傾向が進んでいることから、この領域では根治手術よりも、がんを直接支配する動脈から抗がん剤投与を行う、”超選択的抗がん剤注入療法”が手術より優先されるようになり、がんの予後自体も含めてその効果への期待が高まりつつあります。